【現地レポート⑤】双子の再出発 ~もうひとつ上の風景を求めて~
2021年1月6日
前日、今大会の注目チームのひとつと目されていた日本体育大学桜華中学 (東京) を 2 点差で破った “ 2 人” の立役者は、2 つ目の壁を越えることはできなかった。
「Jr.ウインターカップ2020-21 2020年度 第 1 回 全国 U15 バスケットボール選手権大会 (大会呼称:Jr.ウインターカップ2020-21)」の女子 3 回戦、Earnest (宮城) は四日市メリノール学院中学に51-76で敗れた。Earnest を率いる川田容子ヘッドコーチは「ディフェンスでは相手の大きい子を “ 2 人” で抑えられたと思うんですけど、やはり得点が伸びなかったことが厳しかったですね」と振り返る。
相手の大きい子とは、四日市メリノール学院中学のセンター、#15 福王伶奈である。発展途上ながら、やはり192センチという上背は対戦相手にとって脅威である。その福王を Earnest は172センチの阿部姉妹―― #11 心愛 (ここな) と #12 友愛 (ゆうな) の双子が協力して抑えていった。結果として福王には23得点をとられているのだが、しっかり体を当てることで、彼女にボールを集めようとする四日市メリノール学院中学のミスを何度も誘発させている。
しかしディフェンスで削られた体力は、チームの得点源である 2 人を苦しめた。姉の心愛こそ「昨日の初戦は苦しい感じで、自分のプレーが出せなかったけど、今日は先輩たちと協力して、自分らしいプレーができたと思います」と言うとおり、前日に続いて18得点をあげたが、妹の友愛は「背の高さ、ガタイの良さにひるんでうまくできませんでした」と 8 得点に終わっている。前日の試合では22得点をあげている友愛だけに、チームはもちろんのこと、彼女自身も悔いるところが多いだろう。
それでも彼女たちは最後まで積極性を失わなかった。福王の高さだけでなく、試合前のウォーミングアップから入念にチームディフェンスの確認をしていた四日市メリノール学院中学の厳しいディフェンスに対して、心愛も友愛も果敢にアタックしていた。それは川田ヘッドコーチも認めるところだ。
「向かっていく姿勢を失ってはダメだと伝えていました。あの 2 人も結果的に抑えられたにしろ、どんどん向かっていこうとしていたし、ディフェンスの間を割ってでも行こうとする姿勢はすごくよかった。身体能力の高い双子ですから、これからにつながるんじゃないかと思います」
しっかり者の姉・心愛と、どこかふわふわしていて、姉曰く「いわゆる天然ってヤツですね」と言われる妹・友愛。日常生活ではケンカもするが、バスケットになると自然と通じ合う。
「なんとなく、ここにいるなってわかるんです」
積極的に 1 対 1 を仕掛ける姉は、合わせのうまい妹との関係をそう語る。一方の妹は姉をこのように評している。
「自分でちゃんと仕掛けられたり、判断がしっかりできるので、尊敬しています」
そして何より 2 人の考えが一致したのは、この大会にかける思い。2 人は揃って「先輩たちと 1 試合でも多く一緒にプレーしたいから頑張った」と言っている。
敗れはしたが、彼女たちはまだ 2 年生。この敗北はきっと彼女たちがより成長するための貴重な糧になるだろう。
「今日の前半は個人プレーが多かった。後半はよくなったけど、もう少しみんなでパスを回して、チームとしてかみ合わせたい。そのうえで私自身は大切なところで点を決めたい。何度もカットインをすれば、ディフェンスが集まってくると思うので、そこで周りにパスを出したり、さらに突破できるようになりたい」
心愛がそう言えば、友愛はこう続く。
「背の高さにひるまないメンタルを強くすることと、自分で攻められるようにしたり、ゴール下で力強く打てるように、もっと鍛えていきたいです」
心愛と友愛―― 2 つの “愛” がそれぞれ強く輝き、より強く結びつけば、来年はもうひとつ上の風景を見られるはずである。