現地レポート

【現地レポート②】チームカルチャーを構築する

2021年1月4日

 B.LEAGUE のユースチームだからといって特別なことは何もない。彼らもみんな発展途上の中学生である。いや、むしろチームのカルチャーづくりという意味では、中学やクラブチームに遅れをとっているかもしれない。それでも彼らは B.LEAGUE のユースチームという誇りを持って、戦っている。

「Jr.ウインターカップ2020-21 2020年度 第 1 回 全国 U15 バスケットボール選手権大会 (大会呼称:Jr.ウインターカップ2020-21)」の男子 1 回戦、京都ハンナリーズ U15 (京都) は奥田バスケットボールクラブ (富山) に74-85で敗れた。奥田バスケットボールクラブは、馬場雄大 (メルボルン・ユナイテッド) や八村塁 (ワシントン・ウィザーズ) を輩出した奥田中学校をベースとするクラブチームであり、彼らを指導した坂本穰治氏がヘッドコーチを務める。

 敗れた京都の佐々木和子ヘッドコーチは「積極的なアタックで、相手チームのファウルを誘い、相手のエースの選手 (#9 高田将吾) を退場させることができたのはゲームプランどおりでした。ただ彼以外の子のシュートが予想以上に入ってしまいました」と敗因を語る。

 もうひとつの誤算は、スターターの 1 人である #8 小石悠樹が試合前にケガをしてしまい布陣を一部、変えざるを得なくなったこと。そこから選手間に動揺が走ったと佐々木コーチは振り返る。
「私としては代わって出た選手でも十分戦えると思ったんですけど、他の 4 人には精神的な大きなダメージがあったようで、シュンとなってしまった。そこでもう一度気持ちを燃やして、やりきることができなかった。アクシデントを振り切って、じゃあ、誰がやるんだ? みたいな気持ちでやれたらもっとよかったのですが……私自身、今回の経験を受けて、今後はそういう指導もしっかりしていきたいと思います」
 選手だけでなく、コーチにとっても全国の舞台はさまざまな糧を得られる場なのである。

 そうした誤算、アクシデントに見舞われて敗れた京都だったが、彼らの築いているカルチャーの一端もしっかりと表現していた。それがキャプテンの井上涼雅のリーダーシップである。186センチの高田とマッチアップした井上の身長は177センチ。ミスマッチをつかれる場面はいくつもあったが、彼は得意の 3 ポイントシュートとドライブで最後の最後までボールを追い続けた。
 プレーだけではない。動揺の走るチームメイトに声をかけ続け、ときには相手チームにもエールを送り、倒れた相手を気遣う姿勢も見せていた。
「チームの誰もが勝ちたい気持ちを強く持っていたので、コミュニケーションをしっかり取ろうと思って、声を掛けていました。相手チームに対してはフェアプレーというか、彼らと試合ができることに感謝をして、相手チームにもそういうことを伝えています」
 しかもそれは誰かに教わったわけではない。
「自分たちで考えて、チームを作っているんです」

 チームメイトをリスペクトし、相手をリスペクトし、ゲームをもリスペクトする。試合では敗れてしまったが、京都が築き上げているカルチャーは後輩たちに受け継がれて、よりよいチームになっていくはずである。

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